ご存知の方が多いと思いますが、養子縁組とは法律上の親子の縁を結ぶことです。養親と養子の間に血縁関係がなくても、養子になれば法律上は実子と同じに扱われます。当然、相続の権利も与えられます。
相続税では、配偶者や子や孫、両親や祖父母や兄弟姉妹といった法定相続人の数により非課税枠が定められています。例えば、法定相続人が妻と子供1人の場合はこうなります。
【3,000万円+600万円×2人=4,200万円】
これが妻と子ども2人になると、非課税枠が600万円分増えるのです。
【3,000万円+600万円×3人=4,800万円】
こう聞くと、「養子の数を増やせば増やすほど節税できるのでは?」と考えるかもしれません。しかし、残念ながら民法と相続税法では養子の扱いが少々違います。
民法では、養子縁組をする数に制限はありません。10人でも100人でも養子にできますし、養子は全員が法定相続人となります。しかし、相続税法では法定相続人として認められる養子の数は制限されています。
この項目によって、書類上のみでの養子縁組による相続税の脱税を防いでいます。逆に言えば、定められた範囲内であれば節税が認められているということなのです。
養子縁組をするには、養親・養子が市区町村の役所に「養子縁組届」を提出します。養子縁組届には、養親・養子の署名捺印のほか、証人として成人2人に署名捺印してもらう必要があります
提出の際には養親・養子の戸籍謄本、養子が未成年の場合は家庭裁判所の審判書謄本などが必要になりますが、手続きの手数料はかかりません。届け出に不備がなければ、書類が受理された瞬間から親子関係となります。ただし、養子縁組をするにはいつくかの条件を満たしている必要があります。
相続税の節税のために養子縁組をする場合、長男の妻や孫を養子にすることが考えられます。しかし、実子がいる場合は養子1人しか法定相続人に加えられないという規定があります。
実子が1人なら問題ありませんが、2人以上いる場合は、そのうち1人の配偶者だけを養子として優遇することになってしまいます。実子が2人以上の場合、親族でよく話し合っておく方が賢明です。
また、2003年の相続税法改正で、孫を養子にした際の扱いが変わりました。
相続税法には、一親等の血族と配偶者(息子の嫁・娘の夫)以外の者が財産を相続した場合、相続税が20%増しになるという規定があります。法改正までは孫も養子になれば一親等の血族に含めるとされてきましたが、それが認められなくなったのです。
つまり、孫を養子にして財産を相続させると、孫は相続税を20%増しで払わなければなりません。これでは節税どころが増税になってしまうので、孫を養子にすることは考え直す必要があります。
さらに、まったく関係ない第三者や遠縁の親戚などを理由もなく養子にした場合は、相続税を少なくする「租税回避行為」と見なされてしまいます。すると、養子であっても法定相続人に加えることができなくなります。
養子縁組は相続税の節税に有効な手段です。しかし、相続税のためだけに行うにはリスクが大きい方法だともいえます。
養子になると、法律上は実子と変わらない扱いになります。実子と同じように法定相続人となりますが、同時に養親に対する扶養義務も発生します。養子の実の親が健在だった場合、養子は実の親と養親の両方の面倒を見なければならなくなる可能性もあります。
一度養子縁組をしてしまうと、養親・養子双方の合意がなければ解消はできません。どちらか一方が縁を切りたいと思っても、もう一方が納得しなければ親子関係のままなのです。
養子縁組は民法と相続税法で扱いが違ったりと、複雑な側面を持っています。養子縁組をするなら、事前に弁護士や税理士といった専門家に相談して、考えられるメリットやリスクをすべて洗い出してみましょう。その結果、関係者すべてが納得した上で養子縁組を行うのがベストだといえます。
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※当ページの制度や税率は2017年1月時点のものです